反転授業は効果的?英語授業へ導入する前に考えるべきこと

2021年11月29日月曜日

キーワード解説 コラム

 この記事では、反転授業の概要、ならびに反転授業を導入するにあたって留意しておいたほうがよいことについてまとめています。

反転授業とは?


通常、教師主導の説明的な指導は教室内の集団学習にて行われますが、この説明的な指導を教室外での個別学習(自習)に振り分けることで、教室の集団指導を主体的で協働的な言語活動中心に行う指導法が反転授業です (Flipped Learning Network, 2014)。

反転授業での教室内活動では、生徒が個別学習で得た知識をいかに応用するかが鍵となりますが、その際に教員の適切な支援が必要となります。単に教授内容を反転すればよいというわけではありません。

英語の授業において、反転の活動例は以下のようなものが挙げられるでしょう。

授業外(家庭学習)授業内
言語知識(語彙・文法など)ペアワークを使った定着・発展タスク
リーディング(精読)内容についてのグループディスカッション(リーディングサークルなど)

反転授業では、生徒の授業への積極性の向上や自律的な学習の促進など、さまざまな学習効果が期待されています。

文部科学省が推進する「主体的・対話的で深い学び」や「アクティブ・ラーニング」との親和性、さらにコロナ禍で広まっていったオンライン授業の知見から、反転授業への注目度がますます高まっているように思います。

しかし、反転授業を成功させるには、さまざまな条件や環境が整っていることが大前提となります。

授業中の見栄えは良いですが、「やらせっぱなし」の授業、生徒を「突き放した」授業になっていないか、振りかえりのポイントが多くあるように思います。

反転授業、皆がやりだしたらどうなるか

反転授業を成功させるには、あまりにも当たり前ですが、以下の条件が必要になってきます(Bauer-Ramazani et al., 2016)。

「生徒のモチベーションが高い。また、家庭学習の時間を確保できる 。」

反転授業は、生徒の家庭学習の時間がどうしても必要になります。ここで教員が気にかけなければいけないことは、放課後、生徒にどれほどの余裕があるのかということです。

同じ学校で複数の教員が反転授業をはじめれば、その分家庭学習が増えることになり、教育課程を再編成しない限り(放課後の時間を増やすなど)、授業設計は破綻します。(もともと、宿題という形での家庭学習と授業のバランスが取れており、宿題の内容と授業内の活動を反転しても、家庭学習の時間は従来と変わらないという本来的な反転授業であればうまくいくと思いますが、現状では、時間量的に従来の宿題以上のことを課すような授業が多いのではという気がしています。)

ただでさえ、今を生きる生徒は大変忙しいです。求められる力がより高度化するにつれ、課題の量も多くなっています。

研究指定校、学力向上重点校など、先進的な教育カリキュラムを打ち出している学校などによくあてはまる話かもしれませんが、授業における「アクティブ・ラーニング」や「探究的な学び」は生徒の「授業外での課題」や「授業外での努力」の上に成り立っているものが多いのではないでしょうか。

生徒は多くの科目を同時に履修しています。

しかし、教員は、他の教科・科目の課題状況や、指導形態などについて熟知しているかといえば、必ずしもそうではありません。

ディベートやディスカッションの準備、グループプロジェクト、リーディング・サークル、レポートなどの課題が一度に集中すればどうなるのか。反転授業の形態を取る授業が増えればどうなるのか。

これは、私自身の振り返り・反省でもあります。

なるべく授業内で完結する授業、宿題や持ち帰りの課題に依存しない授業(それでも生徒の力がつく授業)を目指して授業のデザインをしてきましたが、1番の理由は、「生徒がとても忙しそうだった」ということでした。

グループプロジェクトなどを扱うときは、授業内に共同作業の時間を取ることに努めましたが、私の力不足もあり、授業内では終わらない生徒もいました。それでも、放課後の時間で頑張り、締め切りに間に合わせてきてくれました。

教員間の連携を

学校外で生徒に何を期待するのか(放課後は部活もあります)。課題の量や出し方について学校運営やカリキュラムマネジメントという視点で再考する必要があると感じます。

つまり、学校の組織的な対応が求められるということです。管理職や教務の主任教諭(総括教諭)が旗振り役を担わなければなりません。実質的なリーダーが別にいたとしても学校組織として動く必要があり、管理職や主任教諭のイニシアチブが必要です。

大切なのは教員間の連携。言うのは簡単ですが、実際に実行するのはなかなか簡単ではありません。

しかし、授業で扱う教授内容が「深い学び」をターゲットとして質的に変化し、その分、今まで授業で行っていたことを家庭学習にスライドしなければいけないことが少しでもあるのであれば、教員間の連携は不可欠です。

学年会などで、もっと授業のことについて共有する必要があるのではないでしょうか。そして、生徒の声にもっと耳を傾ける必要があるのではないでしょうか(授業アンケートなどで)。

教員研修などでも、反転授業はアクティブラーニングとの関連で紹介されることが多々あると思います。

反転授業がより現実的で、生徒と教師にとって望ましい形で議論されていくことを望んでいます。当記事が問題提起の一端を担えれば幸いです。

<参考文献>

Bauer-Ramazani, C., Graney, J. M., Marshall, H. W., & Sabieh, C. (2016). Flipped learning in TESOL: Definitions, approaches, and implementation. TESOL Journal, 7(2), 429-437. https://doi.org/10.1002/tesj.250

 

Flipped Learning Network (FLN). (2014). What is flipped learning? Retrieved from http://fln.schoolwires.net/cms/lib07/ VA01923112/Centricity/Domain/46/ FLIP_handoutFLN_Web.pdf

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Ryosuke Aoyama

2007-2021年まで公立高校英語教員。現在はブリティッシュコロンビア大学のTESL博士課程に在籍しています。


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